口腔保健推進事業

歯周病は、脳梗塞や認知症、心筋梗塞、心内膜炎、肺炎、糖尿病、早産や低体重児出産など様々な全身疾患に関わっている事がわかってきました。
また、歯を失う最大の原因は歯周病です。歯周病は初期には無症状で、気がついた時には手遅れになって抜歯になってしまうことがあります。歯を失うことによって、固いものが食べられなくなったり、やわらかいものばかり食べるようになったり、どうしても食事の内容が偏るようになってしまします。
そのため栄養摂取バランスが崩れたり、食事の量が減ったりすることがあり、そのことが体重減少、低栄養を招き、やがて要介護、寝たきりへの移行してしまうことがあります。
ある調査では、自分の歯が多く保たれている人は、歯が0本の人に比べて、寿命が長いだけではなく、健康寿命も長く、要介護でいる期間も短かった事が報告されています。

介護につながるような高齢期の心身の衰弱をフレイルといい、多くの人がフレイルを経て要介護状態になってしまいます。オーラフレイルは、お口の虚弱という意味でフレイルと密接な関係があり、要介護状態、寝たきりを進めてしまう重大な原因であるとして、近年注目されています。
「最近、食事の途中でむせることが多くなった」、「食事中によく食べこぼす」、「よく咬めなくなったのでやわらかいものばかり食べている」、「以前より滑舌が悪くなったと言われる」など当てはまることが多い場合、オーラルフレイルが疑われます。
オーラルフレイルを放置していると、咬めない食品が増加し、食事量が減ったり、食の多様性が消失して栄養摂取のバランスが崩れたりして、低栄養、体重減少へと結びついてしまいます。
また、やわらかいものばかり食べるようになるため、お口周りの筋肉、舌の筋肉の機能が低下し、食べ物や水分などの飲み込みがうまくできなくなります。そのため誤嚥性肺炎を発症し、何度も繰り返すうちに命にまで関わる事があります。
オーラルフレイルは、適切な対処で機能が回復します。
いつまでも美味しいものを良く咬んで食べ、健康で長生きができるようにオーラルフレイルを予防しましょう!

口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防、インフルエンザ予防に効果があると言われ、新型コロナウイルスの感染防御にも役立つ可能性が高いと考えられています。

自分の唾液や食べ物が肺に入って、肺炎を引き起こすのが誤嚥性肺炎です。

誤嚥性肺炎の主な原因は唾液中に含まれる細菌で、歯周病菌は肺炎の原因になるものが多く、歯周病の人は誤嚥性肺炎にかかるリスクが高いと言えます。

ある研究で、1995年から2年間にわたって全国11カ所の特別養護老人ホームで口腔ケアの効果を調べる研究が行われました。入所者を2つのグループに分け、一方は毎食後に介護職員が歯ブラシによるブラッシングとともに週に1回歯科衛生士による専門的な口腔衛生管理を実施、もう一方のグループは従来通りとして付加的な口腔ケアをしない状態で比較しました。すると口腔ケアを実施したグループでは、従来通りのグループと比較して、発熱する人は半減し、肺炎発症患者も4割減少しました。
また、ある研究では高齢者に対して歯科衛生士による週1回の口腔ケアを実施したところ、セルフケアを実施した高齢者に比べて、半年の期間中にインフルエンザの発症率が10分の1になったという報告があります。これは歯周病菌の産生する酵素が、インフルエンザウィルスの感染を助けているためであると言われており、新型コロナウィルスに関しても同様なことが考えられ、口腔ケアが新型コロナウィルスの感染防御に役立つ可能性が高いと考えられています。

函館口腔保健センターでは、函館市内にある老人介護施設、町内会、企業、そのほか各種団体を訪問し、オーラルフレイル予防の講演、口腔ケアの重要性・誤嚥性肺炎の予防をテーマにした講演、口腔機能を維持するための口腔体操や唾液腺マッサージなどの実演、口腔内のチェック、お口の健康相談などを実施しています。